真冬のバタフライ

「えっ？このプールに入るの？」
冬、冷たい風が吹く夜にこのプールで泳ぐ。どこの粋がった江戸っ子だよ！とはいうものの、なぜかこのプールに飛び込まなければならない。
周りにも一緒に飛び込まなければならないやつがいるが渋ってる。
そりゃそうだよ。寒いんだもん。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」

私の脳裏にこの言葉が過った。
またさらに寒くなろうとしてどうする。
いや、待てよ・・・
逆にここで外気と同じぐらい内側から寒くなればよいのではなかろうか？
そう思った私は心の底から何度も、何度も念じ続けた。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」

「心頭滅却すれば火もまた涼し」

「心頭滅却すれば火もまた涼し」

「心頭滅却すれば火もまた涼し」

「心頭滅却すれば火もまた涼し」

「・・・心頭冷却すれば水もまた温し」

「･･･今だ！」
ザッパーン。


っはっはははっはははぁー！
見たか！
思いのほか冬のプールは気持ち良い。
クロール。そして、向こう側の壁にタッチ。そして背泳ぎ。
実は私、３歳のころかな。何年かプール教室に通っていまして。



平泳ぎってどうやるんだっけ？
存在、忘れたバタフライ。

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